ただ、篠原君の表情にこれといった変化はなく、いつものクールな顔で私をじっと見つめるのみだ。


そして……特に何の感想もなかったらしく、そのままフイッとそっぽを向いた。



え……無、無視?


いや、似合ってないであろうことは分かってるし、篠原君が〝その格好、可愛いね!〟なんて言うとも思えない。


それでも……無視と言うのはちょっと辛い。せめて〝似合ってない〟とはっきり言われた方がマシだった。



「全く。みずほの彼氏なら、何か一言くらいくれればいいのに」

私の隣で、香が腕を組み、頬を膨らます。


「う、うん……仕方ないよ、それだけ似合ってないってことで……」

「え? 違うでしょ、あの反応は明らかにーー」

「そ、そろそろ一般のお客さんが来る時間だよね! 私、チラシ配ってくる! 香、また後でね!」

「あっ、みずほ……!」


この格好を人に見られるのは相当恥ずかしい。
でも、これ以上この場にいる居た堪れなさが上回り、私は逃げるようにして後門の方へと向かった。