無事に外に出ることが出来て、とりあえずは安心した。
外はいつも以上に真っ暗で、篠原君が家の前まで送ってくれることになった……。


「ごめんね、駅通り過ぎちゃうのに」

「別にいい。通り過ぎると言っても、駅から五分くらいだろ」

「え? 何でうちの場所知ってるの?」

「……何でもいいだろ」


……そう言えば。
小学生の頃の帰り道、〝朝日君〟に意地悪で追いかけられたことがあったような気がする。
いつも家に駆け込んでいたから、もしかしてそれを覚えてたとか?


「……ふふ」

「笑うな」

「ふふ」

恐らく、私が何で笑っているのか、篠原君は気付いている。
そう思ったら、余計に笑ってしまった。



……って。
思わずドキドキしたり笑ったりしてしまっていたけれど。

……私、明日から大丈夫かな? さっきのあの女の子に、また嫌がらせされたり……しないかな?



「桜井?」

隣から篠原君に名前を呼ばれてハッとする。いけない、彼に心配かけたらいけないよね。


「ごめんね、何でもない」

きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせて、今はただ、彼の隣を家に向かって歩いていった。