それからお城に戻った私たちはすぐに支度をしもう一度王子たちのいる謁見の間へ戻っていた。
「本当にもう行ってしまうのか? せめて明日に」
「いや、急ぎたい」
ラグの有無を言わさない口調に王子は諦めたのかそうかと溜息交じりに答え、クラヴィスさんに視線を向けた。
「クラヴィス、あれを」
「はっ」
クラヴィスさんがラグへ何か書類を手渡した。
「船長への書状だ。すでに伝令は出したが、ヴァロール港に着いたらこれを渡してくれ」
「わかった」
「それと港までは馬車を使うといい。城門を出たところに用意してある」
「ありがとうございます」
私は頭を下げてお礼を言う。何から何まで本当に有り難い。
馬車に船、どちらもこの世界に来てから初めての乗り物だ。
(馬には乗ったことあるけど……もう馬は遠慮したいかな)
あのときの乗り心地を思い出しかけ慌てて振り払っているときだ。
「ずっと、気になっていたんだが」
ラグが王子にそう声を掛けた。
「なんだ?」
「……最初に会った時、なんでオレの呪いに気付いたんだ」
(あっ)
そうだ。パケム島でなぜ王子は初対面のラグの呪いにすぐに気が付けたのか、知りたかったのだ。
すると王子は少し声を抑えて答えてくれた。
「獣の姿になると嗅覚も獣並になるんだが、特に呪いの類に敏感になるみたいでな。お前のそれはすぐにわかった」
それを聞いて驚く。
(耳だけじゃなくて、鼻も利くようになるんだ。それで……)
ラグも納得したようだった。