ごくりと喉を鳴らし王様を見つめる。

 メロディになってはいなくても、きっと少しは効果があるはずだ。
 同じように隣で父を見つめる王子の表情も真剣そのものだ。

 と、口から笛を離し、王妃様がこちらを見上げた。

「綺麗な音。これで良いかしら?」
「――うっ」

 答えようとしたそのときベッドで小さな声が上がった。

「!?」
「あなた!?」

 がたりと椅子から立ち上がる王妃様。
 王様の身に、驚くべきことが起こっていた。

 全身が――いや、全身に浮かんだ紋様が、金色に輝きを放っていた。

「あなた!」
「待って」

 王様に触れようとした王妃様を王子が止める。

「大丈夫。効果が出てきているだけです。――カノン」
「はい!」

 内心かなり動揺していたものの、それ以上に取り乱した様子の王妃様を前にして腹が据わる。

(大丈夫)

 王子の言う通り、効果が出ているのだから。

 私は急いで手にしていた書物を捲っていく。
 王様の身体から発せられる光のお蔭で、薄暗くともすぐにそのページを開くことが出来た。

 “愛を伝えるもの”――そうタイトル付けられた曲。

 いつからか忘れられていたメロディが今奏でられようとしている。

「ゆっくりで大丈夫です。王様のことを想いながら今のように吹いてください。そうすれば必ず、病は治ります!」

 力強く言うと、王妃様は瞳を潤ませながらもしっかりと頷いてくれた。