王子は真剣な表情でそれを聞いている。

「愛する人に笛を吹いてもらえなくなることなんて、他にも色々有りそうなもんじゃないですか。例えば、早くに先立たれてしまうとか」

(確かに……)

 心の中で同意する。

「なんで今回に限ってってことか」
「はい。しかもその呪いは一子相伝のようですし、なんか引っかかるなと」
「…………」

 考え込むようにして再び書物に視線を落とす王子。
 私も再度そこに書かれた楽譜を見つめ、口を開いた。

「この他にもいくつかあるんですよね、楽譜」
「え? あぁ」

 顔を上げ頷いた王子に私は言う。

「ひょっとしてその中に、そういう万が一のときに吹く曲もあるんじゃないでしょうか」

 これは王家の呪いについて書かれた書物。
 ということはそこに書かれた楽譜は皆、呪いに関する何らかの意味があるのではないか。
 そしてそんな曲があればこうして長く王家が続いている理由にもなる。――そう思ったのだけれど。

「相手がいないのにどうやって吹いてもらうんだよ」

 ラグからすぐにそんな呆れ声が飛んできて、あ、そっか……と肩を落とす。