「えっ?帰るって?」

沙月が訊ねると、嵐猫が言った。

「俺たち妖怪は、都と呼ばれる場所で生まれこの世に現れたんだ。都は……人間があの世と呼んでいる場所だ」

「その場所で事件があったらしいんだ。どんな内容かは、この世にいる妖怪は誰も知らない」と金次郎が言った。

呆然とする沙月の手を、つららがそっと包む。ひんやりとしているその手に、かすかな温もりを感じた。

「神様から連絡があって、この世にいる妖怪は全てあの世に一旦帰らなければならないの」

桜姫がそう言うと、春太郎と幸子が泣き出した。

「嫌ですぅ〜……」

「離れたくないです……」

「私もみんなと離れるなんて、そんなの寂しいよ!」

沙月は泣きじゃくる二人を抱きしめた。

「そのことで心配する必要はない!」

襖がパンッと開き、おじいちゃんが現れた。

「おじいちゃん、どうして?」

驚きながらも沙月が訊ねると、おじいちゃんは「スケットを連れて来るから大丈夫じゃ!」と言い消えていった。

話、どこから聞いていたの?と一同がポカンとしていると、「うわああああ!!」と悲鳴が響く。

「えっ?この声は……」