先生が教室に入って来ると、
「教科書忘れてきたんで、隣に見せてもらいまーす」
と坂城くんは先生に向かって言った。
先生はネチネチ嫌味を坂城くんに言っている。
私が忘れてきたのに、申し訳なさ過ぎる…!
でも坂城くんは先生に何を言われたって平気な顔をしていて。
心の中で、ありがとうってたくさん言った。
授業が始まってしばらくすると、坂城くんが教科書の端に何かを書き始めた。
何だろうと思ってその字を目線で追う。
”黒川と付き合ってるってホント?”
…すでに坂城くんの耳にも入ってる。
今朝、柊が放った言葉はたった二言なのに、恐ろしい程の浸透力でびっくりしてる。



