「夏だからねー。何だろ、海とか?…あ、屋内の方が良いのか」

「水着NGです!プールもダメです!」

「えー」

「えー、じゃないです。泳げません、脱げません」

「彼氏にしか水着姿見せない主義?」

「彼氏だろうが友達だろうがNGです。脚は健康的な太さだけど、お腹周りヤバいの…!胸も無いの…!」


反応しにくいこと言わないで…?


「あ、でも私、夕方の海は好きだよ。オレンジみたいな太陽が地平線に消えてくの。
それから暗くなって、月明かりで海面とか砂浜とか照らされるの。
想像するだけでも、いいな…って思う」

「確かに、夕方の海は綺麗だよね。暑さも多少は和らぐし。…ん、でも帰り遅くなっちゃうよ?」

「ああそうか。じゃあ…気が向いたら、翔に連れて行ってもらおっと」

「お兄ちゃん一緒だったら、ご両親も安心だろうし。その方がいいね」


俺がちゃんと送る、とか言いたかったけど。

彼女を守りきれる、ってハッキリ言う勇気が無かった。


「夏祭りはどうかな。花火とか、屋台とか。夏ならではで楽しそうじゃない?」

「おお!貴哉くんの浴衣姿見られる!」

「飛鳥ちゃんじゃなくて僕が着る前提なの?」


逆に俺が見たいんだけど。
飛鳥ちゃんの浴衣姿。


「美形くんの浴衣姿は目の保養じゃん!」

「美形くん……」

「美形くん!貴哉くんは美形くん!」

「ああ…ありがとう」

「そんなことないよー!って、否定しない感じはとても好印象でございます」


否定しても、絶対言うでしょ飛鳥ちゃん。
エンドレスで“そんなことないよ”メドレーが起こると思ったから、素直に感謝させていただいたのだよ。

…そういや夏祭りって。