その後は、高校生から大学生くらい向けのメンズ服のショップに入ってみる。


「貴哉くん、いつもここの着てるの?」

「んー、持ってる私服の4割くらいはここかも」

「へえー。ここの値段設定、手出しやすいもんね。女子ウケもいいスタイルだし」

「飛鳥ちゃんウケさえすれば、俺何も文句ないけど」

「貴哉くん、結局何着ててもカッコイイからなぁ…」


今日着てるスポーツミックスなカジュアルコーデも、私のことオトす気満々だし。


「今着てるアウターは、ここで買ったよ。
どう?似合ってる?」

「無意味な質問は受け付けてないなー。
問答無用で似合ってるを選択!」

「ははっ、何じゃそりゃ!」


さあ、こういうのをバカップルと言うのでしょうか?

それはさておき。


「まさか貴哉くんとも、このお店入ると思ってなかったなー」

「も、って?」

「高校生になったばっかの時、翔にバイク乗せられて、服選んで!って」

「あー…何だ、翔さんか」

「それ以外誰が?」

「…佐倉くんとか、その他諸々?金澤くんと2人で出かけるのはなさそうだけど」

「貴哉くんと佐倉じゃ、服のテイスト違うでしょ」

「まあそっか」


佐倉の大学生感と、貴哉くんの年相応な高校生感では、やっぱブランドや好みも変わるよなぁ。


「翔と貴哉くん、一緒に服買いに行ったら、ほぼ一緒の服買いそう」

「そのうち、これ兄着てたわ…とか、思われちゃうかもね?」

「今んとこないけどね、がっつり同じやつは」


プラプラして、お昼ご飯食べて、この後のこと何も考えてなかったけれど…

近くに大きめな公園があって、そこで何故か散歩してから帰ることになった。

話が途切れないから、できるデートだよね。

待ち合わせしていた駅に戻ってきて、


「んじゃ、飛鳥ちゃんバイバイ!」

「うん、バイバイ。またね!」


と軽くやり取りして。

まだ4時か…。

外はまずまず明るい。

だからだねー、貴哉くん。
珍しく、送る!とか1ミリも言わないわけだ。


そんなに長い時間いたわけじゃないけど、楽しかったなぁ。

何なら、今までで1番短かったかもしれない。

だけど、手繋いで、お揃いの物買って。
付き合う前と何ら変わらない、他愛ない会話で笑い合って。

そんな、当たり前みたいで特別な時間は、幸せの時間なんだと思う。


私が書いてた小説の中の人達も、こんな気持ちだったのかもしれない。

…なんて、ちょっと思ってみたり?