「…ちょっ、僕のことそんなにまじまじ見つめないでよ」


彼は照れたようにそう言った。

頬までピンクに染めちゃって。
ホントに純粋だなぁ…。


「私、そんなに見つめてた?」

「うん」

「そっか、ごめん。肌綺麗だし、てか全体的に綺麗だなって、軽く見惚れてた」


私がそう言うと、彼はキョトンとする。それからすぐに、恥ずかしそうに唇の裏側を噛んで目を逸らしてしまう。

でも本当に、私よりずっと綺麗な肌だ。
毎朝20分くらいかけてメイクして、やっとこの顔を保ってるような私だから、すっぴんのまま外なんて出られない。

やっぱ、元が違う。


「あのさっ…」

「うん?」

「俺、2部の十羽貴哉。よろしくね!」


彼は元気に自己紹介してきた。


「どういう字、書くの?」


つい、自分の小説に使えそうな名前だと思い、聞いてしまう。とおわ、って名字は聞き慣れない。


「鳥とか数える感じ」

「はい…?」

「数字の十に、羽で、十羽。貴婦人の貴に、善哉の哉で貴哉」

「へえ、珍しい名字だね。そういうの好き」


また彼は照れたように目を泳がせる。