「ででででできてなんて、ないっ。そんなわけないから!」


 顔をぶんぶんと横に振りながら、必死になって言った。

 そう、別にできてはいないのです。残念ながら。

 すると私をからかうようにニヤついていた良悟くんの顔が、何故か穏やかな笑みへと変わった気がした。

 何かに安心したような、そんな面持ちに見えた。


「そう、よかった」

「え?」

「なんでもないよーん。あ、補習のプリント一緒にやろーよ」

「う、うん」


 何がよかったのか全然わからなかったけれど、彼の言う通りさっさとプリントは終わらせたかったので、再びシャーペンを手に取る私。

 ――しかし、それにしても。

 光雅くんといい良悟くんといい、今日はふたりともわけのわからないことばかり言っている。

 しかも私にとっては意味深に思える内容ばかりで、なんだか気持ちが落ち着かない。

 そわそわしながらも、私は良悟くんと一緒に生物のプリントに取り掛かる。

 良悟くんは意外にもすらすらと問題を解いていた。