八年も前に、一度だけ会った私のことなんて。

 きっと、単純に自分の昔話をしたかっただけなんだろう。


「ね! 光雅くんどれがいい?」

「俺は甘いのそんなに得意じゃないから、しょっぱい系が欲しいな」

「しょっぱい系ね! じゃあポテトチップスとかのスナック系は光雅くん、チョコレートは私がもらうね! それで飲み物はっと……」


 レジ袋を一緒に見ながら、私ははしゃいだ調子で言う。

 彼が覚えていないことを残念に思わないと言ったら嘘になる。

 やっぱり私と同じように、あの時のことを大切な思い出として胸に刻んでいて欲しかった。

 交換した黒猫のキーホルダーを宝物として大事にしていて欲しかった。

 だけど、現実的に考えて、やっぱりそんなことを期待するのは無謀だと思う。

 今こうして、高校になってからできた友達として、楽しく付き合えるだけでいいじゃないか。

 少し前までは、二度と会えないだろうとすら思っていたのだから。

 自分にそう言い聞かせながら、私は光雅くんとお菓子とジュースを分けたのだった。