数学に時間をかけ過ぎて、生物のテスト勉強時間が確保できなかったせいだ。

 赤点じゃないといいんだけどなあ、と光雅くんに笑顔を向ける裏側でこっそり不安になっていた私であった。

 そしてその次の日、学校に行って朝のホームルームが始まるまで、教室でいつものように芽衣と他愛もない話をしていると。


「残念ー、まだ来てないみたいー」

「そっかあ。休み時間にまた見に来よう」


 教室のドア付近で、別のクラスの女子ふたり組が、中を見回してからそんなことを言って、肩を落としながら去って行った。

 その様子を見ていた芽衣が、苦笑を浮かべる。


「あれ、光雅くんを見に来てる女子だよね。しょっちゅう来るねー。しかもいろんな子。すっごくかっこいいもんねー、彼」

「う、うん」


 芽衣の言う通り、入学式で新入生代表として凛々しく挨拶を決めた光雅くんのご尊顔を見に、一年生のみならず二年生や三年生の女子も、頻繁に教室に訪れていた。