本当に、心からそう思った。

 私の方を見た光雅くんは、少しだけ目を見開いている以外は無表情だった。

 しばらくの間何も言わなかった。

 そしてそのクールな表情を崩して微笑むと、こう言った。


「なんか紗良に言われると、そんな気がしてくるわ。なんでだろうな」

「えっ。えーと、わかんない、けど……」


 そんなこと、私にだって分かるわけない。

 だけど私の言葉が、彼を少しでも励ませたのなら、こんなに嬉しいことはない。


「ありがとな、紗良」


 さらに深く微笑んで、光雅くんが言う。

 あの日月に照らされた微笑みが、眼前に存在している。

 さらに光り輝く微笑となって。

 ーー私こそ、ありがとう。

 もうあなたが、あの時のことを覚えていなくてもいい。

 ずっと恋焦がれていたあなたが、もう一度私の前に現れてくれた――もうそれだけでいい。

 もう二度と、会えないと思っていた光雅くん。

 あなたが身近に感じられる存在となってくれたことが、私には心から嬉しかったのだ。