ドキドキを誤魔化しながら言う。

 すると彼は少し照れたようで、私から目を逸らした。


「そりゃどうも。俺さ、数学は特にちゃんとやっとかなきゃなんだよね」

「そうなの? どうして?」

「俺の父親が小児科医でさ。俺もそのあとを継ぎたいって思ってるんだ。だから大学は医学部に入りたくて。そうすると理数系の項目は必須だからさ」

「へえ……」


 話しながら、私は八年前の彼との会話を思い出していた。

 あの時も、光雅くんは言っていたんだ。

 「俺、将来医者になるんだ」って。

 あの時転んで怪我をした私に、丁寧に手当もしてくれた。

 きっとあの時彼は、「将来医者になれますように」って、流星に願ったんだろうって私は思っている。

 ーーすごいね、光雅くん。

 ずっと昔から抱いていた夢を、今も変わらずに追いかけているんだね。


「光雅くんなら、きっといいお医者さんになれるよ」


 幼かった光雅くんの姿が今の彼の姿に重なって、感慨深くなった私は彼をじっと見ながらゆっくりとそう言った。