もちろん、何を話せばいいのかなんてわからない。

 書庫の中はとても静かになってしまった。

 ――すると。


「ねえ、結城さん」


 光雅くんが、作業の手をぴたりと止めてから言った。

 下を向いていた私は顔を上げる。彼は無表情だったので、何を言おうとしているのか見当もつかなかった。


「な、何?」

「さっき綿矢さんが話してた、八年前の男の子とは再会できそうなの?」


 質問の内容が、私と光雅くんとの関係の根本にまつわる問題だったので、心臓が飛び跳ねて口から出そうになる。

 彼は私のそんな心情なんて、知る由もないんだろうけど。

 沈黙の空気に耐え切れずに、なんとなく聞いただけなんだろうけど。

 ――再会できたよ。今私の目の前にいるよ。

 そう言ったらあなたは、どんな顔をするのだろう。

 考えた結果、私にとって残念な未来しか想像ができず、やっぱり黙っていることにしようと決める。


「ううん。名前も分からないし、顔もうろ覚えだし……。再会は難しそうだなあ」


 苦笑を浮かべて、適当なことを言う。