面白おかしそうに芽衣が例の話を始めようとしていたので、一瞬私は止めようと思ったけれど、すんでのところで出かけていた言葉を喉の奥に引っ込める。

 芽衣から八年前の話を聞いたら、光雅くんはどんな反応をするのだろう。

 気になってたまらなくなってしまったんだ。


「へええ! すげー! 八年前って言ったら俺たちまだ……小学二年生、子供じゃん! 一途だねー、紗良ちゃん」


 芽衣が私がずっと初恋をこじらせ続けていることを説明し終えたら、まずは良悟くんが感嘆の声を上げた。

 その口調は馬鹿にするような気配は一切なくて、素直に感心しているようだったので、内心ほっとした。

 しかし、光雅くんはと言うと。


「ふーん」


 と、無表情でそれだけ言うと、本の整理の続きを始めてしまった。

 特に興味は無さそうな、薄い反応だった。

 がっくりと落胆してしまう。

 力が抜けてその場でうなだれたかったけれど、みんながいる手前私は素知らぬ顔をして作業を続ける。