「あ、そういえばさー、光雅くん。さっきなんで紗良にあんなこと聞いたのー? 『彼氏い
るの』なんてさあ」


 棚に本を差しながら、芽衣がニヤッとして言った。

 捨てる本を段ボールに詰めていた私はうろたえてしまう。

 ずっと気になっていたけれど、改めて聞くのもなんだか恥ずかしくて、スルーしようとしていのだ。

 狼狽している私とは対照的に、光雅くんは「え、だってさ」平静とした様子で言った後、こう続けた。


「すげー大事そうにしてるキーホルダーが鞄についてたからさ。恋人にでももらった物なのかな、って思って」


 大事なのは間違いじゃないけど、恋人にもらった物ではなくて片思いの人にもらった物なんです。

 っていうかそれ、あなたなんですけど。

 なんて、心の中でひとり惨めに言う私。


「あー! あれねー。あれは恋人にもらった物じゃないんだよー。っていうか、ダメだよ光雅くん、紗良を狙ったりなんかしたら。紗良には心に決めた人がいるんだからね!」