雲は今のところひとつも見当たらない。


「あのね、お母さん」

「なーに?」

「実は私、今日友達と流れ星を見に行く約束してるんだ。晩御飯食べたら出かけてくるから」


 そう、約束している。

 八年前の流星群の日に、私は光雅くんと。

 私はその約束を果たしに行く。

 例えあなたがその約束を忘れてしまっていたとしても。

 そして私は、自分の想いに決着をつけるんだ。


「あら、そうなの? 暗いから気を付けるのよー」

「うん、わかった」


 お母さんに告げた通り、私は晩御飯を急いで食べた後、ひとりで自宅を出た。

 日が沈んだ街並みは、住宅から漏れる明かりと街灯によってなんとか周囲の状況を把握できるほどの明るさだった。

 あの日、パパとママの手に引かれて何とか夜の街を歩いた私。

 夜といえばお化けや幽霊が出るイメージがあって、ひとりで歩くなんて到底無理だっただろう。

 八年経ち、ひとりきりでも迷わずあの公園を目指せる。

 過去との大きな違いに、時の流れを改めて実感した。