ずっとキミしか見えてない

「――俺のこと、よく見ててくれないかな」

「え?」


 遠慮がちに言う光雅くんの言葉の意味がよく分からず、私は首を傾げた。

 すると彼は、はにかんだように少し頬を赤らめてから、こう言った。


「紗良に試合を見ててほしいんだ。そして応援してくれないかな。そうすれば、頑張れる気がする。今まで以上の力が出る気がする。紗良が見てくれてるって思えば」

「え……」


 どうして光雅くんはこんなことを言うのだろう。

 私が諦めようと、ずっと抱いていた恋を消そうと、躍起になっているのに。

 どうして。

 こんなことを言われたら、私は。


「うん。光雅くんを見て、ちゃんと応援するね」


 張り裂けそうな心を必死に抑えて、私は破顔して言う。

 光雅くんは嬉しそうに頬を緩めた。

 ――今だけ。この試合の間だけ。

 私は光雅くんを好きで好きでたまらない女の子に戻ろう。

 だけどこれが最後だ。

 この試合を最後に。