「それはそうだけど……」


 か細い声で私は言う。

 好きで好きでたまらないのに、光雅くんのためには離れなければならない。

 この板挟みが本当に苦しかった。


「まあ、光雅が紗良ちゃんをどう思ってるかは知らんけどさー」


 空を見上げて良悟くんが何気ない口調で言った。

 さらにこう続ける。
 

「もし俺が光雅の立場で、紗良ちゃんのことを好きだとしたら。重荷だなんて、絶対思わないけどね。むしろこんなかわいい子が近くにいてくれたら、ますますいろいろ頑張っちゃうわ」

「え……」


 私の方を向いて、にこりと優しく良悟くんは微笑んだ。

 励ましてくれているのかな?

 確かに、好きな人がいれば、私だって頑張る気持ちが湧いてくる。

 彼に釣り合う女の子になろう。

 彼に認めてもらおうって、様々なことに一生懸命になるだろう。

 だけど、私や良悟くんがそうでも、光雅くんがそうとは限らない。

 第一、光雅くんが私を好きだなんて思えない。

 そんなことを思って私が黙っていると。