――しかし。


「いや、明らかにおかしいじゃん。生物の補習が終わった頃から。なんかあったんだろ?」


 光雅くんが眉間にしわを寄せて、私に詰め寄ってきた。

 少し怒っているようにも見えた彼の表情に、思わず私は後ずさってしまう。


「何もないよ……!」

「じゃあなんで、前みたいに一緒に何かしてくれないの? 最近俺、紗良に断られてばっかりなんだけど」

「それは……偶然っていうか」

「そんなわけ……」

「はーいストップー!」


 私にどんどん寄ってくる光雅くんだったけれど、私と彼の間に入る様に、ニヤニヤ笑った良悟くんが割り込んできた。


「なんだよ、良悟」


 光雅くんが顔をしかめて不機嫌そうに言う。


「いやー。紗良ちゃんなんか困ってるみたいに見えたからさあ。女の子大好きな俺の出番かなあって。やめてあげなよ、困らせるの。光雅もしかして怒ってんの?」


 良悟くんの言葉に、光雅くんは不意を突かれたような顔をした。

 そして気まずそうに私から目を逸らす。


「俺は別に、怒ってないよ。そう思わせちゃったんならごめん、紗良」

「ううん、私の方こそ……」