それから光雅くんは、あまり私に話かけなくなった。

 そりゃ、何かをしようとするたびに私に拒絶されるのだから、当たり前だろう。

 私の望む結果になったというわけだ。

 光雅くんのためには、これでいい。

 放課後私に勉強を教える時間だってなくなった。

 彼の勉強の邪魔にならなくて、よかったんだ。

 だけど、私の恋心は全く消えてくれない。

 いい結果になったんだと言い聞かせても、光雅くんが私を見て気まずそうな顔をする度に、心はずきずきと鈍く痛む。

 耐えなくちゃ。

 私なんかが彼の夢の邪魔をしてはいけないのだから。

 そんな日々が何日が過ぎた時。

 下校時間となり、テニス部に行くという芽衣と別れて、私は帰宅するためにひとり廊下を歩いていた。


「紗良」


 久しぶりに、その低い声で名前を呼ばれて、身震いしそうになるくらい嬉しかった。

 だけど瞬時に、自分の置かれている状況に気づいて暗い気持ちになる。