ちらりと周囲を見渡すと、新入生のみならず、上級生まで光雅くんの方をうっとりと眺め、頬を紅潮させているようにも見えた。

 私は昔から光雅くんのことを知っているけれど、彼が覚えていないようでは何も意味はない。

 きっと彼にとって私は、今日初めて会ってキャーキャー言っている女の子たちと同じように見えるのだろう。

 違うのに。

 私はあなたの優しさが忘れられなくて。

 八年前の約束をずっと大切にしていて。

 長い間あなただけを捜していたというのに。

 やるせない気持ちになった。

 挨拶を続けている光雅くんを再びじっくり眺めてみると、どこをどう見ても、少女漫画から飛び出してきたかのような、完璧なイケメンがそこには存在していた。

 眉目秀麗、頭脳明晰。

 それに引き換え私は、ギリギリの成績でこの学校に滑り込んできた、普通の女の子だ。

 私と彼、もしかしたらあまり接点が無いんじゃない?

 入学式の間中、私はそんな後ろ向きな考えに支配されてしまっていた。