「あー。よくふたりで話してるよね。月島くん他の女子とはあんまり話さないのに、なんで結城さんとだけは仲良くしてるんだろう」

「そういえば、この前放課後ふたりで教室に残ってたよ。月島くんが結城さんに勉強教えてたみたいだよ」

「えー! マジで! えー……。なんかちょっとなあ。結城さん、月島くんに迷惑かけてなーい?」


 ――嫌な言い方だった。

 私を馬鹿にするような、嘲るような、そんな声に聞こえた。


「月島くんは学年トップだよね。結城さん、生物の赤点補習受けてたらしいから、そんなに勉強は得意じゃないっぽいよね。なんか釣り合わないふたりだねー」

「月島くんは結城さんに頼まれて仕方なく勉強教えてただけじゃなーい?」

「えー。そうだとしたらやめてほしいわ。月島くんに迷惑かけないでほしい。彼の勉強時間が減るじゃんね」

「ほんと、足引っ張るなってのー」


 ふたりがそう話した後、足音が聞こえた。

 どうやらトイレから出て行ったらしい。

 キャハハ、という甲高い笑い声が遠ざかっていく。