「……ひゃっ」

「あっ、ごめん。大丈夫?」

「私のほうこそ、驚かせてごめんなさい」

翔さんが冷たいタオルで頬に当ててくれた時、あまりにも冷たくて変な声を上げてしまった。

でもその冷たさが徐々に気持ち良く感じられた。

翔さんが心配そうに私の顔を見るので恥ずかしくなり、少し下を向いた。でも、それじゃ冷やせないよと、また、翔さんのほうを向かせる。
翔さんは、ニッコリ笑って私と目を合わせた。

やっぱり翔さんは……カッコイイ。

わっ、私。何考えてるんだろう。もう、恥ずかしい。


「お待たせ……」

キッチンから料理を運んできた麗大さん。


「何も食べてないでしょ?お腹空いたんじゃない?」

「すっげぇ、腹減った」

「俺は、翔に聞いてない。美桜さんに聞いたの」

「はぁ?俺にも聞いて……」

「はいはい。翔も、お腹空いたろ?」

「うん。すっげぇ空いた」

「……ふふっ」


慶大さんと翔さんのやり取りが面白くて、思わず笑ってしまった。2人が驚いた顔をして、私を見るから焦ってしまった。

「ごめんなさい。2人の会話が面白くて」

「「よかった~」」

「えっ?」

2人ともホッとした様子だった。

「えっ?」

私だけが、分からないままだった。

「いいの、いいの」

「そう、美桜さんはそのままで」

2人とも優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。
その手の温もりが優しくて……涙が出そうだった。こんなに人の優しさに触れたのは、何時ぶりだろう?2人がいい人でよかった。