家には私以外に誰もいなくて、暗い。チッチッという時計の音とブーンという冷蔵庫の音だけが家中に響いている。
1人で夜ご飯を食べていると、急に悔しさと怒りと悲しさと虚しさがグチャグチャに混ざった感情が込み上げて来て、全身に広がって行く。
「キモ~」
「望月ってさ、ケツでかくね?」
頭の中で、裕斗の声がこだまする。
涙が溢れて来て、止まらない。
嗚咽しながら食べるご飯は、味がしない。
心にめり込んだ弾丸。
焼けつくように疼く銃創。
行き場のない、閉じ込められた感情。
胸に何かがつっかえたような、不快な感覚。
自分の中で何かが崩れて行く。
パラリパラリと少しずつ、少しずつ。
でもきっと、大したことじゃない。
ただのコンプレックス。
ただ耐え忍んで、この怒濤の感情が通り過ぎるのを待つしかないんだろう。いつかは治まるはずだから。
洗面所の鏡の前に立って、自分の姿を映す。色んな洗顔料やら化粧水を試して来たけど治らないニキビとニキビ跡で醜い顔、前歯がピョーンと飛び出していてガタガタの歯、ボッテリとした目、鼻、唇、デッカくてみっともないお尻、ムチムチの太もも...
どうしていいか分からない。
いっときだって耐えられそうにない。
もうイヤ!消えたい...
憎っくき肉を摘んで、強く引っ張る。何度も何度も、憎しみを込めてバカみたいに。そうすれば、脂肪がとれるとでもいうように。
肉々しい、憎すぎる!
鏡の中の自分の顔が歪んで行く。
もう、お菓子を食べるのはやめよう。
これからは、一切お菓子なんか食べない。
お菓子をいっぱい食べていた小さい頃のことを思い出す。特にアメが好きだった。
アメ。
砂糖の塊。
今考えると、ゾッとする。



