「ま、強引に船に連れ込んじまったのは俺だしなぁ。王都までは行かなくても隣の州まで乗せていくんだったら良いんじゃねぇの? イリス」
「はい」

 レオンさんが呼んだのは眼鏡の男性だった。

「現在我々がいるアグロト州はメラヴィエ王国の南東の隅っこに位置しています。ここから国の中心である王都【サンチェトロ】に向かうのであれば、次に経由すべき州は北西の【キトリール州】になります」
「ここからどれくらい掛かる?」
「風壁の状況にもよりますが、3日程で到着するかと」
「オーケー」

 パンっと手を叩くとレオンさんは甲板よりも高い、船首の上へと駆け上がっていった。

「野郎共、良く聞け! 次の俺たちの仕事場はここから北西、キトリール州だ! 到着まで3日の航空にはニーナを同行させる。客人としてもてなす必要はねぇが粗相はしてがすんじゃねぇぞ!」

 レオンさんの言葉に甲板にいた30名ほどの男性たちがワッと沸き立った。

 この短いやり取りの中で彼の統率力だとか、リーダーシップが伺える。


「と、言うわけだニーナ」

 船首から降り立ったレオンさんがこちらに声をかけてきた。

「あの場ではああするしかなかったとは言え、この船にお前を連れ込んじまったのはこの俺だ。俺らにも事情があるから王都まで連れていくことは出来ねぇが、責任持って隣のキトリール州まではお前を連れていく。これから3日、よろしく頼むよ」
「はい! こちらこそよろしくお願いします! 3日、雑用でも何でもさせていただきます」

 こうして、私は3日間。
 このホワイト・アリス号のお世話になることになった。