過去形なのは、彼とどうこうなりたいとは思っていないから。
兄の平くん同様、弟の平くんもわたしにとっては遠い存在だ。
彼に恋をした時のようなドキドキはもうない。
でも、好きだった人は時間が経っても、特別なままなのだ。
心の中の大切なイスに、いつまでも腰かけているような。
会話ができなくても、ずっとそこにいてほしいと思うくらいの、特別。
告白していたら、何か変わっていたかな。
なんてどうしようもないことを考える時もある。
告白する勇気なんかなかったくせに。
出てきた時より、さらにしんみりしながら自分の教室に戻ってきた時。
入口で兄の平くんとすれ違った。
「昼休み、弁当持って屋上」


