その時、かたんと扉の方で音がして。
驚いて振り返ると、男の子がひとり立っていた。
さらさらの黒髪で、シャープな顔立ち。
黒のブレザーの下に目に眩しい白のパーカーを着て、首には赤いヘッドホン。
校則が厳しいこの学校でいつも制服を着崩している、わたしとはまた別の意味で異端なその人は――。
「平くん」
平篤。
ひらがなだと6文字なのに、漢字で書くとたった2文字の名前の平くん。
クラスメイトで、この学校でいちばん頭が良い人。
東大理Ⅲは確実、なんて1年の時から言われている人。
勉強もできて見た目もかっこいいから、学年問わず人気がある人。
そして、
わたしの好きな人。


