秘密の空間に別れを告げて階段をおりると、下に平くんがいた。
ドキッとして足が止まったけれど、すぐに彼がわたしの探していた平くんではないと気付く。
「聡くん……」
「探したよ」
「え?」
「忘れちゃった? 卒業式で、もう1度告白するって言ったよね?」
わずかに首を傾げて、困ったように微笑む聡くん。
う、わ、忘れてた……!
と、正直に言うのはためらわれて、「ごめんなさい」とだけ謝った。
「その様子だと、もう返事は聞かなくてもわかるけど。一応言わせてもらうね」
「は、はい」
「春川さん。俺と付き合わない?」
ためらいも意気込みも感じない、さらりとした告白だった。


