卒業証書の入った筒を手に、校舎へと戻る。
シンと静まり返った校舎に、窓の外からかすかに生徒の笑い声が届く。
ペタペタと来客用スリッパを鳴らしながら、廊下を進む。
上靴をふくめた荷物は、参列していたお母さんが持って帰ってくれた。
この固くて少し汚れた廊下を、白い上靴で歩くことはもうないんだ。
スンと顔を上に向けて、匂いをかいだ。
学校って、独特の匂いがある。
教科書の匂い?
お弁当の匂い?
部活で流す汗の匂い?
とにかく落ち着く、心にまでしみこんだ匂いだ。
卒業していつか、この学校にOBとして遊びに来た時は、この匂いをかいでまたほっとするわたしがいるんだろう。


