盛り上がるみんなの話しから、瀬戸くんの姿を探した。
少し離れた桜の下に、彼はいた。
同級生、下級生いりみだれた女のコの集団に囲まれて、困った顔をしている。
制服なんて略奪にでもあったみたいに乱れてボロボロだ。
さすが、モテる男はちがう。
瀬戸くんの周りをよく探したけど、“彼”の姿が見当たらなかった。
ぐるりと前庭を見回す。
生徒、教師、保護者に溢れたこの空間に、彼はいなかった。
いればすぐに見つけられる自信がある。
彼はわたしにとって特別な人だから。
ふと、視線を感じて顔を上げると、玄関の前に木内さんがいて、こっちを見ていることに気付いた。
いや、こっちを見てるんじゃなくて、わたしを睨んでいる。


