ふと、平くんが顔をあげてこっちを見た。
目が合って、一瞬心臓が跳ねて、そしてすぐわたしから目をそらしてしまった。
平くんに目をそらされるのがこわくて、先に目をそらすなんて、情けない。
自分の上靴の先に視線を落としたまま、教室に逃げるように飛び込んだ。
でもすぐに後悔する。
まるで平くんを無視するみたいな態度だった。
すごく感じが悪いと、自分でも思う。
平くんは何も悪くない。
あの日もお見舞いに来てくれたのに、わたしは彼を追い返すようなことを言ってしまった。
同盟破棄してもいいよ、なんて心にもないことを言って彼を傷つけた。
向き合うことを恐れちゃいけない。
それはわかっているのに、それなのに――。


