「いいよなぁ。もう進路決定してる人は。定期テストの勉強する余裕があって」



隣りからの刺々しい声に、眠気が少し飛ぶ。

拓を見たけど、拓はわたしの方なんか見ちゃいない。


拓のわたしによく似たまるい目の下。

そこにはくっきりと濃いクマが浮かんでいた。


この弟の疲れた顔を見るたび、

わたしは出かけた言葉をむりやり飲み込んでしまう。



「姉ちゃんの場合、勉強どころか寝る余裕まであるもんな」

「拓。お姉ちゃんに当たるのはよしなさい」

「事実を言ってるだけじゃん。ごちそうさま」



苛立たしげに席を立つ拓。

そのままテーブルの上のお弁当を引っつかんで、家を出て行った。