あそこなら、鍵がかかっていたとしても、破って入れるかもしれない。
ふらりとそちらに足を向ける。
顔に落ちる雨が目に入ってきてうっとうしい。
目元をぬぐいながら向かったビニールハウスの入り口は、わずかにあいていた。
ここにいる。
そう確信して中をそっとのぞきこんだ。
「……拓?」
目をこらし、外と同じく真っ暗なハウス内を見る。
返事はないし人影もない。
ここじゃなかったんだろうか。
中に入ってみたら、驚くほどに寒かった。
ビニールハウスの中ってあったかいものだと思っていたけど、これじゃ外と変わらない。
雨に当たらないだけ良いのかもしれないけど。
「拓? いないの?」
もう1度呼んだ時、ハウスの奥の方で砂を踏むような音がした。


