「……わたし、もうちょっと探す」
『唯。あんたまで風邪を引くでしょう』
「わたしはいいよ! もう受験もないし! とにかくまだ帰らないから!」
拓をひとり雨の中に残したまま、帰るなんてできない。
見つかるまで、絶対に帰らないと決めた。
通話を切った時、ふと視界に見慣れた制服が映った。
わたしも3年前まで通っていた、拓の中学の制服だ。
拓ではなかったけど、拓と背格好のよく似たその男の子は、雑踏にまぎれ見えなくなる。
「……中学校」
もしかしたら。
でも、もうそこしか。
とにかく行ってみよう。
いなければまた別の場所を探すだけだ。
わたしは以前通っていた中学への道を、雨に打たれながら駆けだした。


