見えない何かと戦い続け、拓は追い詰められていた。
避けられていたとしても、嫌われていたとしても、わたしが拓を避けるようなことはしちゃいけなかった。
姉としてわたしは、もっと拓に寄りそうべきだったんだ。
平くんのことは考えないようにした。
それよりもいまは拓のことだけを考えなきゃ。
平くんと木内さんのことは、わたしが考えたところでどうにもなりはしないのだ。
どこへ向かうか決まらないまま足を踏み出した時、スマホが鳴りだした。
平くんかとドキリとしたけど、家からの電話だった。
「もしもし? お母さん? 拓、帰ってきた?」
『まだ連絡もないけど、雨が降ってきたでしょ。もう真っ暗だし、唯は一旦家に帰ってきなさい』


