平くんの言葉をさえぎるように、電源ボタンを押した。
その途端、スマホの画面にぽつりと雫がひとつ落ちた。
雨だ。
日中は晴れていたのに、このタイミングで雨が降るのか。
冷えてきたし、ますます拓が心配になる。
コートも着ずに雨に打たれたら、風邪どころじゃすまないかもしれない。
拓はまだ第一志望の受験が控えている。
2月のはじめ頃に第二志望の受験は終わっていた。
レベルは高いけど、拓の成績なら余裕で合格できるはずだったらしい。
でも、拓は落ちた。
そして拓はいままで以上に部屋にこもりきりになった。
お母さんもわたしも、かける言葉がみつからなかった。
でも、だからってそのままじゃいけなかったんだ。


