『おま……声でかい。電話してんだから離れろよ』

『はあ? 電話って誰』

『お前には関係ない』



言い合う声も、なんだか親しげで遠慮がなくて。

顔が見えないせいもあって、ふたりがじゃれ合いながら笑ってる光景を思い浮かべてしまう。



『ごめん、春川さん。それで?』

「……ううん。あの、なんでもない」

『は? なんでもなくはないよね。何かあったんだろ?』

「本当になんでもないの。ごめんね、忙しい時に電話しちゃって!」



震えそうになる手をおさえて、わたしは笑った。

声だけ笑った。

顔はぜんぜん笑えていないのに、明るい声で言った。



『待って、春川さん』

「ほんとごめんね! じゃあ明日、学校で!」

『春川さ』