父親にも母親にも叫びを受け止めてもらえないなんて、そんなの拓がかわいそうだ。
お父さんは拓に突き飛ばされた時、テーブルに腰を打ちつけて病院に行っているらしい。
お母さんは拓が帰ってくるかもしれないから、家に残ったと涙声で話す。
探してももらえないなんて、そんなのってない。
拓はきっと待ってる。
家族が追いかけてきてくれるのを、待っているはずだ。
「拓、スマホ持ってってないの?」
「スマホはカバンにもコートにもなかったけど……。拓、財布もコートも持って出てないの」
「もう夕方なのに、風邪引いちゃうよ! わたし探してくる!」
「探すって……唯っ!? 待って!」
お母さんの止める声も聞かず、わたしは帰ってきたばかりの家を飛び出した。
ひとりきりで震えてる拓が脳裏に浮かぶ。
胸が潰れそうになりながら、わたしは走った。


