「そういうことじゃないって?」
「あの子今日、万引きしたのっ!」
泣きそうな顔でそう言ったお母さんに、絶句した。
拓が、万引き……?
忘れかけていたあの光景がよみがえる。
平くんと見た、書店での拓の姿。
結局漫画の本は見つからなかったし、見まちがいだと思っていたのに。
拓は本当に万引きしてたの?
でも今日は学校が休みで、拓は塾の受験対策講座に出てるはずじゃ……。
「お昼頃に電話がかかってきて。駅前の本屋さんからで、お宅のお子さんが万引きしていま話を聞いているから、すぐに来てくれって……」
「万引き、してたの?」
「漫画の本を2冊ね。あの子漫画なんて読まないのに……」


