そう思ったのに、



「拓……!!」



お母さんが叫んだのはわたしではなく、弟の名前だった。

しかもわたしを見て、あからさまにがっかりした顔をする。


失礼な。

がんばってきた娘にねぎらいの言葉があってもいいんじゃないの?



「なんだ、唯か……」

「ひどいっ! お帰りくらい言ってよー」

「それどころじゃないの! 拓がいなくなっちゃって……っ」



切羽詰まったようなお母さんに、わたしは大きく首を傾げた。


拓がいなくなった?

それがどうしたっていうのか。


そんなに遅い時間というわけじゃないし、出かけただけなんじゃないのかな。



「なんか拓に用事? 電話してみればいいのに。スマホ持ってってるでしょ」

「そういうことじゃないの!」