耳にはいつものヘッドフォン。
壁に寄りかかって、外を気にしてる。
まるで誰かを――わたしを、待ってるみたいだ。
実際そうなんだと思う。
だってもう平くんは卒試も受かっていて、ここに用はないんだから。
なのにいるってことは、わたしに用があるってこと。
不意打ちだったので、焦っている自分がいた。
落ち着こうとしている間に、平くんがこっちに気付いてしまう。
「春川さん。遅いから心配したよ」
「ちょ、ちょっと緊張で寝坊しちゃって」
気持ちが落ち着かないまま、彼の元に向かう。
平くんはわずかに首を傾げた。
「緊張で寝坊すんの? 逆じゃない?」
「わたし、睡眠欲が強いから……。それより、どうしたの?」
「ああ。……これ、渡そうと思って」