なんて、いつまでも不貞腐れてはいられない。

このままじゃ本当に遅刻してしまう。



「行ってきますっ」



慌ただしく家を出て、いつもより早足で駅へと急ぐ。


今日はよく晴れているけどとても気温が低い。

吐く息は空の雲のように真っ白だ。


でも緊張のせいか寒さはあまり感じなかった。

寒さどころじゃない、と身体が言っている。



「ええと、後方確認して、ミラー直して。ああもう、わたしすぐ忘れるから……」



頭の中で何度もシュミレーションして、ぶつぶつ喋りながら向かった教習所。

時間ギリギリだったから慌てて入ろうとしたんだけど、入口に立つ人影を見て、思わず立ち止った。



「平くん……」



いるはずのない平くんが、コートに両手を入れて立っていた。