「それじゃあ平くん、お疲れさま!」
「うん。春川さんもお疲れ。明後日の卒検、がんばって」
「ありがとう! おやすみなさい」
改札で別れて、ホームへの階段を上る。
そっと振り返ると、平くんはまだその場から動かず、じっとわたしを見ていた。
何か、言いたげな瞳で。
でもその“何か”はわたしにはわからない。
やっぱり男の人って、言葉にするのが苦手なのかな。
男の人って限定するのはおかしいか。
わたしも全然、言いたいことを言えていないんだから。
言ってくれなきゃ、言わなきゃ、伝わらないことのほうが多い。
わたしたちはイヤと言うほどわかっていても、それができないのだ。
好きも嫌いも、愛も憎いも、いつになったら言葉にできるんだろう。
「やっぱり渡せなかった……」
ひとりホームに立ち、バッグからトリュフの入った箱を出す。


