「もう暗いし、家まで送るよ」

「え! い、いいよ。平くんも疲れてるでしょ? それに……」

「それに?」



木内さんが、待ってるんじゃないの?


このあときっと、平くんは木内さんのところに向かうんだろう。

唯一特別なチョコレートを、もらうために。



「春川さん?」



首を傾げる平くんに、わたしは無理やり笑ってみせた。



「それに、お母さんにおつかい頼まれてるし! わたしはひとりで帰れるから大丈夫だよ!」

「……そっか。わかった」



あっさりと引きさがる平くんに、なぜかショックを受けた。

もうちょっと粘ってくれてもいいのに、なんて。


勝手過ぎて最悪だ。

こんな自分を知られたくない。