だから明日、明後日は予定が合わない。
平くんと顔を合わせることができないってこと。
つまりバッグに忍ばせたチョコレートを渡すのは、いましかないのだ。
「平くんは、ちょ、チョコ何個もらった?」
「……さあ。帰り際押しつけられただけだから数えてないよ」
少し不機嫌そうに答える平くん。
ロッカールームから出たところで、出待ちしていたバイトの子たちに囲まれて、チョコを大量に押しつけられたらしい。
ひとりなら断れるけど、大勢で来られたら断りきれないと、モテる男しか言えないセリフでため息をついていた。
「春川さんは――」
「え?」
「……いや」
なぜかふたりとも無言になって、そのまま駅に着いてしまった。
駅の近さがうらめしい。


