早番シフトだったので、夕方にはあがることができた。


夕方といってももう外は真っ暗だ。

バレンタイン当日の忙しさで、1時間残業したせいもある。



「大変な日だったねえ」

「まるで戦場だったな」



一緒にデパートを出たわたしたちは、いつもより重い足どりで駅に向かっていた。


もうくたくた。

明日は筋肉痛かもしれない。



「平くん上がる直前、ホワイトデーまで続けないかって、社員さんに声かけられてなかった?」

「うん。断ったけど」

「断っちゃったの?」



平くんはちょっと困ったような顔をして、すぐにフードをかぶった。

もう見慣れた、彼のクセのひとつ。



「春川さんいないと意味ないから」