平くんはおでこに手を当てながら、「もういい」と力なく言う。
怒りは収まったみたいだけど、呆れさせてしまったようで、それもまた悲しくなる。
「あの、どうして平くんが?」
「こっちも補充しないと間に合わなくて。春川さん、どれ運ぶの?」
「あ。この箱を30個」
「30個!? ひとりで運べる数じゃないでしょう」
「大丈夫だよ。わたしこう見えて、力持ちだから!」
「そういう問題じゃないよね」
そうだけど、台車もよそで使われてしまっているからひとりで運ぶしかない。
男の子のバイトって、平くんとの他にひとりしかいないし。
「俺も運ぶの手伝うよ」
「でも平くんも補充しに来たんだよね?」
「俺の方は数が少ないから。ほら、急ごう」


